築地で食べたこと

30年近く前の話だけど、私が大学生の頃、居酒屋でバイトをしていたことがある。
結構大き目のチェーン店で、ホールや簡単な調理(アジのたたき位は作ってた)もしたけど、メインは築地市場仕入れに行く時の車の運転手。
バイト先が食事付きなんで、仕入れが終わった後の食事まで面倒見てくれていた。
私は魚の目利きなんて出来ないから、若い板前の助手として築地に行っていたんだけど、その板前が中々贅沢で朝っぱらから、寿司だの鰻だのなんてことも度々あった。
最近テレビで築地の内(中)や外の飲食店が紹介されているけど、その頃よく行っていた店が出てきて懐かしい。
名前は忘れちゃったけど、内にあった洋食屋はホントうまかったな。
カウンター10席位の小さな店で、今はもう亡くなっちゃったろうけど、接客は婆さんが一人で仕切ってた。
目黒の「とんき」なんかもそうだったけど、婆さんが仕切ってる店というのは当たりが多い。
その婆さんが私たちを可愛がってくれて、飯は大盛りにしてくれるし、頼みもしないのにカニコロッケが一つオマケで付いてきたりした。
その時間、内で飯を食べているのはオッサンばかりで、若いのは私たち位しかいなかったから(多分他の店では飯代なんか出してくれなかっただろうと思う)、珍しかったんだろう。
もちろん、贅沢なものばかりでなく、普通に牛丼やカレーも食べた。
何を食ってもうまかった。
私の記憶違いかもしれないが、内にはラーメン屋が無かったような気がする。
少なくとも私は内で食べた記憶は無い。
よくテレビにも出てくるけど、外の有名な店で食べた。
その店は当時から市場関係者以外のサラリーマンなんかも食べていた。
今と違い、昔は関係者以外が内なんか気軽に入ってこれる雰囲気ではなかった。
ボサッとしてたら軽子に轢かれたって文句は言えない世界だった。
今ではすっかり高級魚に出世した鰯も、大羽が1箱100円、200円という時代だ。
盆暮れには私たち若い者に大トロを振舞ってくれた鮪屋は今も健在だろうか?