食の嗜好

年齢とともに食べ物の好みが変ってきた。
とは言っても、相変わらずラーメンだのトンカツだのは大好きだが。
まず、煮物や漬物が本当にうまいと思うようになった。
昔はとにかく肉がなければ飯にあらずという感じだったけど、今は野菜や山菜、油揚げなどを煮付けたものや、漬物があれば十分満足できる。
ずいぶんと経済的な体になったもんだ(おまけに酒まで止めてる)
若い頃は煮物、佃煮、漬物なんぞはついぞ食べたことがなかったけど。
劇的に変ったのは、30になったばかりの頃に初めて経験した、手術、入院かな。
当時、毎日飲んだくれていた一流営業マンの私は腹が痛いのなんかは全然気にしなかった。
飲めば治っていたからね。
ある朝、どうにも我慢が出来なくて医者に行ったところ、即、オペということになった。
どうやら盲腸をひどくして腹膜炎を起こしていたらしい。
正式にはナンたらという病名がついていたが、こちらはそれどころではない。
盲腸にしてはえらく時間がかかったようだが、麻酔で寝ていたんでよく知らない。
目が覚めた後、当分の間は目茶苦茶痛くて「もっと、麻酔を射ってくれ〜ェ!」と大騒ぎして、美人の看護士さんによく怒られていた。
美人の看護士さんというのは、大分良くなってから気付いたのだが、当初はそれどころではなかった(笑)
人間、痛みがあるときは色気も食い気もあったもんじゃない。
その食い気の方だが、体が良くなった後もしばらく米のとぎ汁みたいなおかゆばかりでいい加減うんざりしていた。
米粒が確認できるおかゆが出た時はホントうれしかったなぁ。
偏食の塊だった私が、初めて梅干や海苔の佃煮を口にした。
いや、あれはうまかった。
今でも梅干や佃煮を食べるけど、あの時ほどうまくない。
人参の煮たのなんかも食べられるようになった。
不摂生のあげくの唯一の収穫だ。
それでも病院を抜け出して食べた蕎麦屋のカツ丼が忘れられない。
忘れられずに、退院後しばらくしてその店に食べに行ったけど、その時はうまくもなんともなかった(笑)
健康には気を付けなきゃいけないと殊更思う今日この頃である。